アンリ・マリー・レイモン・ド・トゥールーズ=ロートレック(1864-1901)はフランス屈指の由緒を持つ伯爵家の長男として南仏アルビに生れた。年子の弟が一歳で死ぬと両親が別居、乳母に育てられたロートレックは八歳でパリに移り母親と暮らした。早くから絵の才能を発揮したが、生来の虚弱体質と発育不全を心配され、湯治などの設備が整ったアルビに戻る。しかし十三歳と十四歳のときにそれぞれ落馬と転倒により右脚と左脚を骨折、ついに完治せず、下半身の成長が止まってしまった。このような状況をもたらしたのは濃化異骨症(俗に「トゥールーズ=ロートレック症候群」とも呼ばれる)が原因であるとされ、それは何代も続いた近[…]
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